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ローマ人の物語 (3) ― ハンニバル戦記(上) 新潮文庫
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| ジャンル: | 歴史,日本史,西洋史,世界史
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ハンニバル戦記
史上に燦然と輝くハンニバルの戦い。
上巻では、第一次ポエニ戦争を扱っているために、その導線
が引かれているに過ぎないが、読み物としての充実振りすこ
ぶる高い。二十歳の頃は読みづらいと感じていた塩野女史の
文章だが、私の勘違いだったらしい。
大国カルタゴへの挑戦ともいえる戦いは、ローマにとって長
く過酷なものだったろう。同時に地中海の権益を一気に強く
するという収穫もあった。
ローマの発展はとまらない。
戦争家の真骨頂
あのハンニバルである。幾度となく語られた彼だが、このようなスケールから描かれたことは、これまでなかった。常に、日本人好みの「ヒト」に焦点を当てたものが多いからだ。
でも、塩野は違った。というより、歴史は違う。もっと広大で深遠なシステムなのだ。これを喝破した彼女はすばらしい。
スキピオがハンニバルに「あなたは戦争の時代にはふさわしいが、平和の時代には必要ない」と言ったのは、的を得ているのだろう。
第1次ポエニ戦役とその後
地中海の制海権を巡って、ローマとカルタゴが激しく争った時代の物語。本巻では、第1次ポエニ戦役とその後のことが扱われていて、カルタゴがシチリアに持っていた権益をどのようにして失い、ローマがどのようにして地中海に覇権を唱えたかが分かりやすく描かれている。
この時代、シチリアをめぐる抗争が絶えなかったことは世界史で習った。しかし、どのような背後関係があって、どのような規模の抗争が行われたのかは聴いたことがなかった。本書は、シチリア勢力分布図を何度も示し、ある場所を確保することがローマやカルタゴにとってどのような意味があるのかを分かりやすく説明してくれている。
とても細かなところまで目が行き届いているのがこの本の特徴だと思う。印象に残ったのは、ローマ軍の宿営地建設のマニュアル化の徹底ぶりだった。
「ローマ人には、マニュアル化する理由があったのだ。指揮官から兵から、毎年変るのである。誰がやっても同じ結果を生むためには、細部まで細かく決めておく必要があった。」
歴史は面白い
本書はハンニバル戦記の序章が丁寧に書いてある。
地図や武器、勢力図などが分かりやすく散りばめられていて、読み手の想像力を刺激しながらもそれだけでは追いつかない部分をしっかりと補ってくれる。
ハンニバルやスキピオなどの歴史上人脈上の伏線を少しずつ織り交ぜながら物語が進んでいくので徐々に盛り上がっていく緊迫感が文章から伝わってくる。
船さえまともに操れなかったローマ人が独創的な海戦をこなせるようになるまでのスピードの速さは本当に凄い 他民族を潰さず受け入れるという路線がここでも成功している
ポエニ戦役前半戦
「ハンニバル戦記」(上)では ローマとカルタゴが シチリア島を巡って繰り広げた戦争の前半戦を描き出している。
第一次ポエニ戦役である。
塩野は カルタゴ=大国、ローマ=新鋭の挑戦者、 という明快な設定を行った上で 長きに渡ったポエニ戦争の第一部を書上げている。
塩野は「戦争くらい 当事者の国の民を裸にして見せてくれるものもないからである」と言っている。その為であろうが 戦争を書き出す塩野の筆致は鮮やかだ。
塩野自身は元来「歴史小説家」であろう。しかし 本書では「歴史小説」ではなく「歴史書」を目指している。戦争を書くにしても 「戦闘」を描き出すわけではない。歴史家の目と 小説家の創造力の両方を駆使して 「戦争」というものの本質に迫ろうとしている。
新鋭ローマが 大国カルタゴに勝利した点に関しては 塩野は両国の「考え方」に求めている。カルタゴが「閉じられた国」であったのに対し ローマが「開かれた国」であった点に 最大の理由を探している。
この塩野の「仮説」が正しいかどうかは ローマ史の素人である僕には分からない。但し この本から 僕が学んだ最大の内容は その塩野の「仮説」にあることも確かだ。
歴史から学ぶ点は多いと よく言われる。その好例が 本書である。僕はそう思っている。ポエニ戦役も 僕の勉強も まだ始まったばかりなのだ。
新潮社
ローマ人の物語 (4) ― ハンニバル戦記(中) 新潮文庫 ローマ人の物語 (5) ― ハンニバル戦記(下) 新潮文庫 ローマ人の物語 (2) ― ローマは一日にして成らず(下) 新潮文庫 ローマ人の物語 (6) ― 勝者の混迷(上)新潮文庫 ローマ人の物語 (7) ― 勝者の混迷(下)新潮文庫
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